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研究室について

 疎水性部分にエポキシ樹脂の硬化反応の硬化促進剤として働く塩基性イミダゾリル基を有する両親媒性ブロック共重合体を水中に滴下することで、塩基性部分が核になったナノカプセル(ミセル)が形成されます。
 当研究室では、このミセルをエポキシ樹脂の潜在性硬化促進剤として利用できることを明らかにしました。一般的にエポキシモノマーと塩基性化合物が混合されると直ちに硬化反応が起こりエポキシ樹脂が得られるため、両者を混合した状態で長期間安定に保存することはできません。当研究室で作製したミセルは、エポキシモノマーと混合しても塩基性部分が殻により保護されているため長期間安定に保存できますが、加熱により殻が軟化すると塩基性部分がエポキシモノマーと反応し、エポキシ樹脂を得ることができます。このような「潜在性」を有するエポキシ硬化剤は様々な用途への応用が期待されています。
 
Figure 1. 両親媒性ブロック共重合体の水中での自己組織化によるミセル形成



 Figure 2. 塩基性部位を有するナノカプセル(ミセル)が
エポキシ樹脂の潜在性硬化促進剤として働く機構


 本研究で使用する塩基性イミダゾリル基を有するブロック共重合体は、①塩基性部位を有する疎水性モノマーと、②様々な親水性モノマーと、③連鎖移動剤(CTA: Chain Transfer Agent)を用いたRAFT (Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer)重合により合成しています。リビングラジカル重合の一種であるRAFT重合を用いることで、高分子の分子量や分子量分布、疎水性・親水性ポリマーの比を制御できるため、このブロック共重合体を用いて様々な構造のミセルを作製することができます。


Figure 3. RAFT重合による両親媒性ブロック共重合体の合成
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