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基本概念: 分子集合体の「形」とナノ構造の「貌」の設計及び「形+貌」由来の機能材料の創出

 
 特殊構造を有する有機・高分子の設計と合成、それらの分子の自己組織化による超分子形成、その超分子構造体を反応場とする時空間構造が制御された金属酸化物・半導体ナノ構造体の設計などに基づく光機能、不斉・分子認識機能、触媒機能、導電機能、エネルギー変換機能、濡れ・弾き機能を有するナノに特化した材料開発を行います。
 
 分子設計においては、ポリオキサゾリン・ポリエチレンイミン骨格を活用した多様な高分子構造制御を中心に、それらの高分子が発現する自己組織化能力と分子複合体・超分子形成について詳細に検討し、それらが潜在する「形」と機能を化学します。
 
 分子複合体及び超分子が示す「形」をひとつの足場・鋳型にし、その周辺でのミネラリゼーションを時空間レベルで制御することで、「形」から「貌」が転写された複雑階層を有する酸化物ナノ構造体を設計します。この過程において、特にソフトのキラルテンプレートからハードなキラル酸化物へのキラル転写を中心とする種々のキラル金属酸化物ナノ構造体の合成を目指します。
 
 また、複雑階層構造のナノ構造体に、発光体、赤外線吸収サイト、金属ナノ粒子、ペロブスカイト型酸化物等を複合し、特異的機能を有するナノ材料及びナノ表面薄膜の開発を行います。
 

 親水性、水溶性、両親媒性の高分子構造を設計し、水中での高分子挙動に関する基礎物性の把握、及びその機能を追求します。特に、高分子構造設計では、リビングラジカル重合とカチオン開環重合手法を駆使し、それらのポリマーにポリオキサゾリン、ポリエチレンの骨格を巧みに組み込みにより、その分子骨格に刻まれた「情報」を見出すことに注力します。

 材料的視点では、同じ分子構造であっても、分子機能と分子集合体機能には大差が出ることが多くあります。特に、分子集合体が一定サイズに成長する過程での形状発現は、ナノ材料を設計する上で極めて重要なパーツとなります。そのためのスマートな分子集合体の開発を行います。

 有機物の機能には時間軸での「臨時性」・「一過性」が最大の問題となります。時間軸でも耐えられるタフなまたは半永久性の構造を持たせるには有機無機ハイブリッドが有効です。当然、これには異物混合ではなく、異相・異質界面での新しい機能の発現をともなう設計が必要となります。そのため、自然界で生物が営むミネラリゼーションから確かな知恵を学び、それを駆使した有機無機ハイブリッド化のプロセスを開拓します。

 高分子といえば、炭素同士の繰り返し結合が無限に伸ばされた分子がイメージされます。元素を色分けせずに考えると、結合の延長線では共通点があります。それは切ってもきれない繰り返し構造の存在です。金属酸化物にもその規則性があります。その意味で、高分子の構造と金属酸化物構造をナノの次元で同一し、相互の共通構造ドメインを転写し合うことは可能となります。特に、金属酸化物ナノ構造体設計において、形状とキラリティを同時制御できる材料創製を目指します。

 自然界での多くの化学現象は水を媒体に利用します。合成化学では水を嫌う反応は数多くありますが、当然これは人間の都合により決めたことに過ぎません。水を嫌う反応ばかりを好むと、水は常に邪魔者に扱われます。水を好む反応系の構築、これは地球環境の保全には必要不可欠です。水を化学反応場での必須の構成成分として利用することを考えるのが、上で述べたそれぞれの課題での共通点です。これを更に系統的に研究することで、水中で機能する材料創製を目指します。

 フラットな基材表面の表面積は単純な算数で示されますが、もし、同じ面積のフラットな表面に肉眼では見えないナノ次元での凹凸構造を作り上げるとその表面積は指数的に増大されます。様々な機能を持つナノ構造体で構成された薄膜を設計し、そのナノ膜表面での物質の挙動を調べながら、化学反応・物質分離を制御できる流体デバイスの開発を行います。