LnCa2Fe3O8+δ(Ln = 希土類元素)

 

LnCa2Fe3O8+δ:本物質は「グルニエ (Grenier) 型」と呼ばれ、A3B3O8で表される化学組成を基本としています。Aには希土類元素 (Ln) とCa、BにはFeが入り、A =Ln, CaとB = Feが規則正しく配置した結晶構造をもっています(図1)。マンガン系酸素貯蔵材料Ca2AlMnO5+δと同じく酸素欠損した層を含んでおり、この層へ過剰な酸素原子を取り込む性質を示します。

私たちは、本物質がCa2AlMnO5+δと同様に多量の酸素を高速可逆に吸収放出することを発見しました。図2はLn = Sm(サマリウム)試料におけるTGデータです。400℃付近の一定温度で雰囲気を窒素→空気→窒素に切り替えると、最大で約2.5重量%に相当する酸素を吸収放出することがわかります。

LnCa2Fe3O8+δは資源量が豊富なカルシウムと鉄を主成分としていること、動作温度がCa2AlMnO5+δに比べて大幅に低いことが特長であり、低コスト・高性能を両立した実用材料として有望です。

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         図1. LnCa2Fe3O8+δの結晶構造.     図2. SmCa2Fe3O8+δの等温TGデータ. 窒素-空気のガス切替により、
                               400℃付近で約2.5重量%の酸素を吸収放出する。